No 175 ザンビア スラムの学校 1年生のお絵描きから見えてくること
ザンビアの首都ルサカにあるスラムの中の小学校で、小学校1,2年生の子供たちを対象に、お絵描き大会を行いました。
テーマは、将来なりたい職業です。
例えば子供たちに、インタビューしたとしても、緊張してうまく話せなかったり、一言で答えたり、隣の子と同じ回答を行ったり、情報を引き出すことが難しいと感じる事が良くあります。
そんな時は、テーマを与えた上で、子供たちの自由に絵を描いてもらうと、どんなことを考えているのかを理解できる事が良くあります。
ザンビアのスラムの小学校の子供たちが、将来なりたい職業
「 子供たちが将来なりたい職業を絵で描いてもらいました 」
今回の子供たちの絵を見ていると、女の子は、看護婦さんや先生が多く、男の子は兵士や警察が多く描かれていました。
このくらいの年齢の子供たちが希望する「なりたい職業」は、身近な人々の影響がとても強いです。
男の子たちが、警察や軍隊に憧れるのは、ザンビアには仕事が少なく失業率が高いからだと思います。
特にスラムの小学校なので、お父さんお母さんの仕事は、農業、洗濯、炭焼きの仕事、路上での物売り、失業していて物乞いなど、憧れの対象にはなりにくい仕事が多いです。
収入も1か月1万円前後の方も多く、国連の定める最低ライン 1日 2ドルぎりぎりか、それよりも少ない人も多くいます。
アフリカが貧しい理由
「 警察や軍に入れると国家公務員として安定した生活を送ることができます 」
ザンビアも含めてアフリカ諸国、特にサハラ以南のサブサハラ( sub-sahara)と呼ばれる地域では、製造業があまり発達していません。植民地時代の仕組みの名残で、鉱物資源、農産物などを輸出して、海外で製造されたモノを輸入する事が多く、国内の産業が発達していない国が多いです。
そのため、経済成長が鈍く、失業率も高く、貧しさから脱出できない国が多くあります。そのうえ、宗教、民族間の対立、鉱物資源の独占を巡る対立などで、内戦を行っている国も多くあり、更に貧困に拍車をかけています。
国連や海外からの援助に頼って道路、空港、学校などのインフラ整備などを行うことが多く、援助に頼る習慣がついているのも貧困脱出できない大きな原因です。
学校や空港や道路、ダムなどのインフラ作成を海外に頼ると、援助した国のやりやすいようにコントロールされてしまう事も良くあります。
たくさん勉強して、良い仕事に就く難しさ
「 10歳のマイワシちゃんは、親の手伝いで夜に物乞いをするので朝起きれず学校にあまり来れません 」
ここザンビアでも、首都のルサカには、大きなショッピングセンター、ホテルなどが立ち並びますが、ほぼ外国資本です。
外国資本のホテルやレストランで働くには、大学を出ているなど、ある程度の教養がないと難しいです。採用枠が少ないので、一部のエリートしかその職に就く事ができません。
大学を出るためには、高校も卒業する必要がありますが、親が貧しい家庭では高校の授業料、制服代、教科書代を支払うことができません。
そのため、プライマリースクール(小学校、中学校)を卒業したあと、学校にも行けず、仕事もない若い世代が沢山存在しています。
親の仕事 ( 農業、物売り、炭焼きなど )は、単純労働で低賃金です。結婚が早かったり、子供が多かったりする家庭も多いので、1日1食、十分な量を食べる事が出来ない家庭も多くあります。
このような家庭の子供たちにとって、将来、良い仕事について、高収入を得て、家族を賄うことは、とても名誉な事です。1人出世した家族が、数十人の身内を養うことはよくある事です。
貧しい子供たちが憧れる職業
「 警察や軍に入れると国家公務員として安定した生活を送ることができます 」
勉強で、出世する事が難しいとなると、子供たちは、体力勝負の仕事を目指します。
軍も警察は国家公務員で、将来の安定した生活が約束されます。教養よりも体力の方が優先されることもあり、教養が少なくても、スラム出身でも、一定の試験にさえ合格すれば、軍や警察に所属する事が可能です。
このため、軍や警察に入りたいと望む子供が沢山いますので、お絵描きにも現れてきます。
また、サッカーなどのスポーツに憧れる子供もとても多いです。TVなどで、良く放映していますし、もし、ヨーロッパのリーグに数年でも参加できると、一生分のお金を稼げるからです。
国によりメジャーなスポーツは異なりますが、必用な道具が少なくボール1つでできるサッカーが貧しい国ではメジャーになります。
そのようにして世界中の子供たちが、サッカーに憧れて一生懸命に練習しますが、サッカー人口も多く、環境も良くないので、実際にプロリーグに所属するのは、とても難しく狭き門です。
それでも他に憧れる対象が少ないので、多くの子供たちがサッカーを一生懸命に練習しています。
ザンビアと柔道
「 2024年の世界難民の日のイベントに参加した柔道チーム 」
ザンビアで、サッカーと同じような憧れの対象になっているのが、柔道です。
ザンビアの警察や軍の高官の方々の中には、柔道の有段者の方が多くいます。このため柔道の大会で優秀な成績を残せると、優先的に軍や警察、スポーツ関係の省庁などに入れる道が開けます。
このため、柔道で身を立てようと一生懸命に練習している子供もとても多いです。
私たちNPO法人グッドライフは、この状況を支援するために、ザンビアでの柔道着の寄付、サッカー用品の寄付活動を行っています。
毎年、6/20の「世界難民の日」には、ザンビアのメヘバ難民キャンプで、柔道着の寄付活動を行っています。
ザンビアでの女性の仕事
「 洗濯のお手伝いをする女の子 」
女の子の側で見ると、アフリカではまだまだ女性の地位が低いです。また、家事労働の時間が長いです。
例えば、お湯を沸かすにも、水を汲んで来て、まきを拾ってきて、火をつけてからでないと火をつけれません。
洗濯もすべて手で洗って、手で干します。共同の洗濯場などまで、子供を背負いながら、洗濯物を持ち運びする光景も良く目にします。
食事も、なるべく安いマーケットに買い出しに行って、かごなどを頭の上に載せて家まで歩いて運んでから食事を作ります。貧しい人ほど、まとめ買いができない( お金も冷蔵庫もない )ので、マーケットに行く回数も増えます。
このため、忙しい大家族では、女の子は、お母さんの手伝いを求められます。学校に行って卒業したとしても、将来に繋がらないのなら、家の手伝いをした方が役に立つ。と考える人が沢山います。
なので、女性ができる仕事で、人のお世話をすることで成り立つ仕事として、看護婦さんに憧れる女の子が多いのだと思います。