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フィリピンの都市スラムを語るうえで、「スモーキーマウンテン」と「ハッピータウン(トンド地区)」は、国の経済成長と貧困層の現実とのギャップを象徴する存在です。フィリピンは近年、サービス業や海外送金、若い労働人口を背景に、東南アジアの中でも比較的高い経済成長率を維持してきました。しかし、その成長の恩恵は社会の隅々まで行き渡っているわけではありません。
スモーキーマウンテンは、かつてマニラ最大のゴミ埋立地に形成されたスラムで、1970〜90年代には数万人が廃棄物回収によって生計を立てていました。当時の平均賃金は日給100〜200ペソ程度と非常に低く、子どもも労働力として働くことが珍しくありませんでした。そのため就学率は低く、特に中等教育まで進める家庭は限られていました。1990年代半ば以降、政府は経済成長と都市再開発を背景に、スモーキーマウンテンの閉鎖と住民移転を進めましたが、仕事の確保や教育の継続が十分に支えられず、生活再建に苦しむ世帯も多く生まれました。
一方、ハッピータウンは現在も人々が暮らす都市スラムで、フィリピン経済の成長期においても取り残されがちな低所得層の現実を映しています。住民の平均賃金は日給300〜450ペソ、月収にすると9,000〜13,000ペソ程度とされ、最低限の生活を維持するのがやっとの水準です。経済成長によって雇用機会は増えていますが、その多くは非正規で不安定な仕事であり、安定した所得にはつながりにくい状況です。
教育面では、公立学校への就学自体は制度上可能であり、初等教育の就学率は比較的高い傾向にあります。しかし、学用品費や交通費、家計補助の必要性から、中等教育で中途退学する子どもが多く見られます。経済が成長しても、低賃金層にとっては「学校に通い続けること」が依然として大きな負担なのです。ただし、ハッピータウンでは教会やNGOによる学習支援が行われ、教育を通じて貧困の連鎖を断ち切ろうとする取り組みも続いています。
このように、フィリピンの経済成長は都市の景観や産業構造を大きく変えましたが、スモーキーマウンテンやハッピータウンが示すように、その成果は均等に分配されていません。住宅、平均賃金、就学率を一体で考えなければ、成長の影で生きる人々は取り残されたままです。フィリピンの都市スラムは、経済成長の「成功」と同時に、その限界を静かに問いかけている存在だと言えるでしょう。


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